2023/09/16 10:18
部屋の掃除をしていると埃を被った懐かしい絵が出てきた。
それは、16歳の時初めて一人旅をした記憶だ。
高二の夏、沖縄の離島、竹富島を旅した。
那覇の南、石垣島の周りに点在する島々。
その八重山諸島の中でも一番小さな島。
小五の時、親友と北海道まで二人で行った事はあったけど、本当の意味での旅は全く違うものだった。
それは、今まで生きてきた経験の中で間違いなく一番濃い時間。
偶然兄の部屋で目にしたシマダスという本。
偶然めくったページに載っていた島。
そんな偶然から一人旅は始まった。
学校、バイト、アトリエ、僕が過ごしている日常の中でこんなにも違う世界があるのかとその広さを知った。
風、海、空、花、水牛、野良猫、港・・・その全てが色彩鮮やかで、モチーフとなりスケッチブックに描き留めた。
島に流れる時間があまりにも違うもので、本当に遠くに来たんだと何故か嬉しくて涙が出た事を覚えている。
そして、風景だけでなく三ヶ月弱居た島で多くの人に出会った。
日本人だけでなく沢山の外国人にも。
宿泊していた旅館の中庭に「ゆんたくの間」という場所があって、夜になると自然と人が集まり語り合う。
そして朝になるとそれぞれの場所へ旅立って行く。
連絡先なんて交換もしないし一期一会。
またこの島で会いましょうって合言葉のように挨拶をして。
そんな毎日、毎晩は、今思えば夢のような環境だった。
島を歩いているとどこからともなく聴こえてくる三線の音。
月の明かりが眩しくて眠れなかった夜。
雨に追い掛けられた夕方。
港で見た朝日。
流れ星の軌跡がずっと残っていた星空。
桟橋で見た、西表島に掛かる沈みゆく太陽。
20年以上経った今でも記憶を辿ると鮮明に思い出す。
本当の自由とは、全ての責任と孤独を背負う覚悟がある者にだけ訪れる。
なんとなくだけどそんな事を感じた旅だった。
それから何度も竹富島を訪れ、八重山諸島は全て旅をした。
今も島では風は吹いているだろうか。
三線の音を聴こえているだろうか。
蝶の道に今日も沢山の蝶は飛んでいるだろうか。
あの人は元気だろうか。
リゾート開発が入る前年を最後にもう何年も訪れていないけど、あの島のままであって欲しいと願う。
夏の終わりに、目を閉じて16の夏を想う。
竹富島という島唄を。